ACT1550 てとてトライオン総括(書きかけ)
ということで、トライオンの総括。
凄く長くなりそうなんでちまちま書いてきます。
註1:当然ながらネタバレ全開です。
註2:本文でいう「過去作品」とはPULLTOPの奇数ナンバーのタイトルを指します。
夏少女系のラインについては特に断りがない限り除外しています。
註3:まだ十分にシナリオを読み込んでいないので、
あちらこちらに認識不足が誤解があるやもしれませんがあしからず。
気付いた事をそっと教えていただければ私大喜びです。
<ヒロインとシナリオ観>(夏海だけ)
<システムについて>
<物語のメインテーマと作品の設定について>
<慎一郎について>
<サブヒロインの位置づけについて>
<今回のもちたんとわらびー>
以上について記載。
<ヒロインとシナリオ観>
■織原夏海
キーワードは『距離感』。
ふと気が付けば隣にいて、いつも明るく楽しく笑っているそんな女の子。
それでいて考えるべきところでは考えていたりする、
何気にキャラ全体としては完璧超人に近い強さを持っているが、
基本的な言動があほなせいか、あまりその強さを感じさせない。
そんな夏海には落ち込んだり悩んだりするネガティブな姿が似合わないためか、
夏海のシナリオではこれといった『壁』にぶち当たったりはしない。
途中で無差別トライオンを発動してしまうために慎一郎と距離を置かされてしまうが、
それが特にシナリオ内で重い扱いをされることもなかった。
プロローグの描写からするに幼年時代にも溺れた慎一郎を助けたことがあるようだが、
別に本シナリオで深く語られることはなかった。おぼろげな思い出。
■十倉手鞠
発売前情報における手鞠の紹介文はなんとも言い難い微妙なものだったが、
その理由が製品版をやってみてよくわかった。
手鞠というキャラは一言では語りづらい……
ところどころで微妙に言動がズレてるんだけれども、
本人の感性や性格がズレているというよりは、
コミュニケーション能力がズレていると見るべきか。
そのシナリオにおいては手鞠と鷹子の絆が重要視されている。
他のヒロインにもサブキャラが1人ずつ用意されているが、
ヒロインの人間ドラマそのものに関わってくるキャラは鷹子のみ。
ちさと、優の扱いはそれほど重くなく、
芹菜は一乃のキャラクター形成に深く関与しているものの、
シナリオ内での行動は『一乃をよく理解している親友』として、
慎一郎に助言を行う程度に留まっている。
鷹子はかなり特別なサブヒロインと言えよう。
「二人よりも三人の方が、
安定する関係だってあるんじゃないですか?」
おね星青ルートを彷彿とさせる展開であるが、
別に鷹子と男女の関係になったりしないことはよかったのか悪かったのか。
……個人的にはよかったんじゃないかと思うけど。
毎回恒例ハリケーンブラック関係の出来事については、
『手鞠のシナリオを描くこと』よりもむしろ獅子ヶ崎学園の真の現状、
秘められた真意を示唆することに重きが置かれているように思える。
<システムについて>
ゲームシステムとしては、単純なAVG。
分岐も2択が2つの2×2で4ルート、と実に潔い分岐。
まあ、えろげAVGにおいて意味のある選択肢が用いられるゲームなんてザラにはないので、
別にこれでも問題ないと思う。
今回からゲームエンジンが変更されていて、
過去作品にはない演出、エフェクトが各所に見られる。
特に多用されているのは『モノローグを画面いっぱいに表示する表現』や、
『画面全体に表示される三点リーダー』あたりだろうか。
だが似たようなモノローグでもその表現を使ったり使わなかったりしていたり、
全編通して1度くらいしか使われていないエフェクトがあったり、
正直なところ、このゲームエンジンにスタッフがまだ『慣れていない』感がある。
他には『!』や『?』などを飛び出させる表示が用いられているが、
これはおね星での『吹き出しシステム』を改良したものであると思われる。
おね星では「思ったより使い勝手が悪かった」と言われほとんど使われていなかったが、
本作ではクリックと文章切り替えの間に表示される、
というタイミングの良さのためか、それなりに多用されているようだ。
<物語のメインテーマと作品の設定について>
PITAシステムや獅子ヶ崎学園の校風、そして獅子ヶ崎の声……
それらが紡ぎだす物語のテーマは、作中の表現を借りて言うならば、
「みんなで手と手を繋ぎ、心と心を合わせること」
一言で言うと「みんな仲良く」なのだが、
それを「手と手を繋いでトラブル解決」という複雑怪奇なギミックを仕込んで表現している。
最終シナリオのクライマックスにおいて穿心角降魔捨法『威颶離』よろしく、
学園の仲間達全員で手を繋いでトライオンする光景こそが、
この物語の向かうべき最終到達点であり、
クライマックスに相応しいシーンであると言えよう。
私は今作が発表された瞬間から、
『獅子ヶ崎のシステムダウンは何者かの陰謀』という説を唱えていたが、
結局そのようなことは作中では直接語られていない。
しかし個人的には、やはりシステムダウンとトラブル頻発は、
あらかじめ定められていた通りの予定調和だったのではないかと思う。
簡単に獅子ヶ崎学園の状況を整理すると、
『ハリケーンブラックで覚醒した獅子ヶ崎の声により、
学生達をからかうかのようなトラブルが頻発している』
『それに対するには、学生達は自分達で何とかするしかない』
『その手段としてPITAリーダーを生徒が所持している』
『その上で最大限にシステムに干渉するためのキーである主人公の登場』
『主人公がPITAリーダー所持者と手と手を繋いで問題解決』
原因と結果だけを並べると、このように分かりやすく並ぶのだが、
ここに『動機』を加えて考えるとまた違った見方ができる。
獅子ヶ崎の声の『楽しみたい』という欲求、
それを知ることができたであろう『巫女』の家系の理事長に、
生徒自らで状況を打破して欲しい、
むしろそれを楽しんで欲しいという学園方針、
そして慎一郎や手鞠の父の研究心と遊び心と、
最後に慎一郎の父の親心。
現在の獅子ヶ崎学園は、これらを全てを満たしている状況にあるのだ。
これが本当に単なる『偶然』の産物と言えるのだろうか?
また、作中では特に理由が言及されていない(はずだ)が、
『PITAシステムの中央管理室は、
獅子ヶ崎の声にアクセスするための施設を流用したもの』
という設定が普通に考えると謎過ぎる。
そうであるならば、中央管理室が獅子ヶ崎の声に掌握されかねない、
というリスクがある事など分かりきっていたはずだからだ。
個人的には、獅子ヶ崎学園を創立するにあたって、
PITAシステムを流用するにあたって、
理事長や慎一郎父達は逆にその特性を利用したのではないか。
つまりは、学園の中枢を敢えて乗っ取らせる――
あるいは乗っ取りやすい状況を用意してやることで、
自らの望む『教育の場』を作り上げたのではないか。
むしろ獅子ヶ崎の声を聞くことが出来た理事長が、
獅子ヶ崎の声を炊きつけた可能性も考えられる。
さらには、トクラウォールはバグで発生したものではなく、
始めから獅子ヶ崎の声を守るためにあった――
そして学園トラブル解決の最後の壁として用意したもの――
とまで考えるのは想像が過ぎるだろうか?
トクラウォールの認証パスワードの内容からすると、
まるで手鞠父が手鞠にトクラウォールを突破させることを
あらかじめ想定していたようにも思えるが。
少なくとも、慎一郎父が慎一郎に首輪をつけて獅子ヶ崎へ送り込むことは、
決して一朝一夕で行き当たりばったりに決めたことではないと、
慎一郎に獅子ヶ崎学園の単位取得用通信教育を受けさせていたことから伺える。
そしてまた、手鞠シナリオにおいて以下のようなモノローグがある。
確かに、親父は俺に
『面白い場所だろう? しっかり楽しめ』
と思ったんだろう。
でも、この学園には、もっとたくさんの
『遊んでもらいたい』という気持ちが詰まっている。
そして、そんな学園だからこそ、
トラブルさえも楽しみに変えて、
乗り越えていける人たちが集まっている。
親父をはじめとする、
この学園を作った人たちの手のひらの上にいる。
そんな気もするけど……。
このモノローグこそが、
『今の獅子ヶ崎学園の状態はなるべくしてなった予定調和の産物』
であることの証明ではないだろうか。
<慎一郎について>
今作の主人公である鷲塚慎一郎というキャラクターは、
どうもかなり意識して『強い』主人公を目指して生み出されたフシがある。
心身ともに基本スペックはかなり高い。
多少のことでは凹まないし、凹んだとしても地力で立ち上がってこれる。
そして何よりも「慎一郎はストーリーを支配している」。
大抵の状況では慎一郎は自分で考えて自分で答えを導き出すし、
芹菜などのキャラから助言を受けることはあっても、
「言われたから動いた」という印象はあまりない。
重要な場面で他人と意見がぶつかった時には、
自分の主張をキチンとして相手を説き伏せることもできる。
端的にいうならば、おね星の陽介の真逆キャラ、それが慎一郎である。
もともと、PULLTOP奇数作品のヒロイン達は主人公に比べて強かった。
彼女らは様々な形で絶大なパワーを持っていて、
シナリオもヒロインを中心に立てるものが多く、
主人公はむしろヒロインと対になるもの、という感があった。
優太はヒロインのパワーを受け止めるのではなく受け流し、
あるいは持ち前の柔らかさで包み込んでいた。
(とらかぷVFBで『優太はお母さん』と語られていたのが言い得て妙である)
陽介はヒロインのパワーに完全に押し流されて空気化した。
新はパワーを持っている主人公であったが、
姫達のパワーに比べると明らかに弱く、印象が弱くなった。
そこで今回は、
『ヒロインのエネルギーに真っ向から立ち向かえる主人公』
を目指したのではないか。
過去作品に負けず劣らずパワフルなヒロイン達に真っ向から立ち向かえる、
そんな主人公を造るのに成功した結果、慎一郎というキャラが出来上がったと思われる。
<サブヒロインの位置づけについて>
今作においてはヒロイン1人につき、サブヒロイン1人がつけられている。
トライオン公開時、ヒロインと共にサブヒロインが公開されたという時点で、
サブヒロインがいつもに比べて重いウェイトを占めていることが窺い知れるが、
それぞれのヒロインシナリオにおける位置づけを見てみると……
ちさと、優:ヒロインの親友、同僚、ルームメイト。ただしそれ以上でも以下でもない。
鷹子、芹菜:ヒロインのシナリオにおいて非常に重要なポジションにいるキャラ。
このように2パターンにくっきりと分かれている。
極端な話、前者については別にいなくても、
ほぼ同じ内容でシナリオを進行させることは可能。
もっと言うなれば、鹿子木や騎士並みの存在感である。
逆に後者については、かにのみやびシナリオにおけるリーダの如く、
ヒロインと不可分といってもいいくらいにヒロインのシナリオに関わってくる。
おそらく今作の企画において、
「みやび-リーダ」のような構図を全てのヒロインにも造り上げる、
というものが一つの大きなコンセプトだったのではないかと思う。
しかし、実際にキャラを作り上げて物語を構築していくと、
ちさとと優についてはそうはできなかったのではないか。
夏海は非常に『強い』キャラで、シナリオを進めるにあたって特に誰の助けも必要とせず、
鈴姫の問題はあくまでも鈴姫と慎一郎の間でどうにかしなければならず、
そこに優が深く干渉する余地はなかった。
『夏海はサブヒロインを必要としないキャラ』、
『鈴姫はサブヒロインを介在させる余地がないキャラ』であったのだ。
そのため、ちさとや優は鷹子や芹菜に比べて軽い位置づけになったのではないかと推測する。
ところで一つ残念なのが、鷹子が手鞠に執着する理由があまり語られなかったところ。
鷹子は「手鞠に執着する」というのが最大のアイデンティティであり、
キャラクターの存在意義なのだが、その『理由』については特に言及されていなかった(はず)。
そこが説明されれば、鷹子のキャラがより深まると思うのだが……
ただ単に『付き合っているうちに父親の心境になってきた』のだろうか。
<今回のもちたんとわらびー>
もちたん:「ごきげんくるっくー!」のカメラマンとして登場、時折吹き飛ばされる。
わらびー:群集のSDCGにてど真ん中に陣取る。